経営者なら知っておきたいM&Aの基本的な流れと要する期間

M&Aの流れと要する期間は、売り手と買い手のそれぞれの状況や、案件の複雑度合いによって、スケジュールが前後したり、必要な手続きが異なったりしますが、一般的なケースにおけるM&Aの流れはほぼ同様です。M&Aに要する期間についても、それぞれの案件ごとに異なりますが、一般的なケースや必ず心に留めておいていただきたい注意点があります。

今回は、経営者なら知っておきたいM&Aの基本的な流れと要する期間について解説していきます。

M&Aの流れ

上の図は、M&Aの実務における一般的な流れを表したものですが、実際には、売り手の下記のような事情の影響によって、スケジュールの組み替えや実施手順の変更などが必要になってくる場合があります。

① 緊急性
売り手の様々な事情により、どうしてもできるだけ早く売却したい場合には、基本合意契約を締結しないなどして、途中の手続きを省略したスケジュールを組む場合があります。

② 売却希望金額

売り手の個人借入の返済資金調達などの事情で、どうしても一定金額以上で売らざるを得ない場合、時間をかけてでも高く買ってもらえる買い手候補を探す場合があります。

③ 売却目的

実務では売り手の売却目的によってもスケジュールの組み方や手続きに影響を与えることがあります。例えば、「資金繰り」や「経営者の体調不良」などといった理由で早く売却せざるを得ない場合があります。

最終的には、上記の売り手側の事情の他に、買い手の興味度合いや社内調整の時間などによって全体のスケジュールが延びたり、手続きが変更になったりします。

売り手は、できるだけ要望に沿ったスケジュールでM&A手続きが進められるようにするために、売却希望金額・財務状況・引継ぎ可能期間などを事前にM&A会社に伝えたうえで、依頼するようにしましょう。
ただし、経済・金融状況、案件内容からして長期化が見込まれる場合もありますので注意が必要です。

上記図のM&Aの流れの個別手続きに関する解説は、次回以降の記事で詳しくご説明していく予定です。
ここでは、経営者としてM&Aの流れの中で特に気を付けるべき重要ポイントをご説明します。

M&Aの流れの重要ポイント

M&Aを検討し始めた経営者が最初にやることは、M&A会社への相談です。M&A会社を利用する場合には、適切なM&A会社を選定することが最も重要なポイントであるといっても過言ではありません。
※M&A会社の選定に関するポイントは下記の記事で詳しく解説しています。
失敗しないM&A仲介会社の選び方 | 4つのポイントを解説

M&Aの流れの中での重要ポイントは、M&A会社との初回面談時に必ず確認すべき以下3つのことです。

☑そもそも会社が売れるのか?(売却の可能性)
☑売れるとしたらいくらで売れるのか?(予想売買金額)
☑どんな買い手に売れるのか?(買い手候補のイメージ)

まず、売却の可能性の判断は、会社の業種や規模、経営状況、金融事情、M&Aマーケットの状況など多数のファクターにより状況が変わってくるため、専門性や経験によるところが大きく、M&A会社の実力を判断するためにも詳しく説明してもらう必要があります。

次に、予想される売買金額は、初回の面談時は資料不足などで提案がないかもしれませんが、大まかな金額や計算方法は最低限ヒアリングするようにしてください。また、例えば、個人の借り入れ返済の関係で必要な最低金額がありましたら、その希望売買金額は必ずM&A会社に伝えるようにしてください。もちろんそれが実現する可能性も含めて確認する必要があります。

最後の買い手候補については、同業が良いのか、異業種が良いのか、投資ファンドが良いのか、それぞれの特徴とメリット及びデメリットなどを確認する必要があります。昨今、同業者への売却は、情報漏洩リスク、相乗効果に対する疑義などの点で人気がなく、むしろ異業種や周辺業種への承継が好まれています。また、規模の比較的大きい中堅企業の間では、その豊富な資金力、海外展開力、経営人材派遣やIPOのノウハウなどの観点から投資ファンドが買い手として選択されるケースが多くなってきています。

これら3つの事項は、基本的なことではありますが、M&Aを決断した経営者のみなさんが最初に必ず聞いておくべき内容です。また、M&A会社を選択する場合は、これらの事項を適切にアドバイスしてくれる会社を選別すべきでしょう。

M&Aに要する期間

ここからはM&Aに要する期間について解説していきます。

結論から言うと、M&Aに要する期間は平均して半年程度です。これについても、案件の内容によっては、短い場合で3~4か月、いい買い手がなかなか見つからない場合などは、1年以上かかるケースもあります。

この期間は、売り手、買い手、買い手の方で資金調達が必要な場合は金融機関などいろいろな当事者の様々な事情により、期間は左右されます。期間が延びることによって一番インパクトがある、別の言い方をすれば一般的に損をするのは、売り手です。なぜかと言いますと、案件が進むにつれて売り手は重要な資料や情報を買い手に出していたり、案件の途中で外部や従業員にM&Aのことが感づかれたりした場合、破談のリスクは売り手の方が大きくなるからです。逆に時間が延びれば延びるほど買い手は対象会社の実状がよく見えてくるため、一般的に交渉力が増します。

M&Aも縁のものですのであまりダラダラと1年以上同じ相手と交渉するのは、お勧めしません。お互い真剣みが薄れ、緊張感がなくなり、結果的に飽きてしますからです。ですから、M&Aのでスケジュールのコントロールは非常に重要です。アドバイザーを選定する場合も、スケジュール管理をきちんとリードしてくれそうか、選定のポイントのひとつと言えるでしょう。

M&Aに要する期間の重要ポイント

先述しましたように、M&Aの初回相談からクロージングまでに要する期間は、一般的に半年程度はかかります。このように時間のかかるM&Aですが、M&Aを行う決断をした瞬間から、既にM&Aが決まったかのような安心感を抱いてしまったり、M&A後のことに関心が移ることで、現在の事業経営への気が緩んでしまい、急激に会社の業績が悪化するといった事例があります。

M&Aにおいては、直近の業績が非常に重要であり、M&Aの手続きを進めている間に会社の業績が急激に悪化してしまうと、譲渡条件が大幅に悪化し、最悪の場合には破談となってしまうことがあります。そのため、経営者がM&Aの案件化を決断した際には、まだスタート地点に立ったばかりであることを自覚して、肩の荷がおりたと安心するのではなく、むしろクロージングまでの間は改めて気を引き締めて業績を向上させなければならないと、経営者は自分を鼓舞していくことが非常に大切です。

まとめ

M&Aの流れと要する期間について、経営者が特に注意すべき重要ポイントを交えながら解説させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?M&Aは百戦錬磨の経営者であっても一生に一度、経験することがあるかないかのことです。

今回、ご紹介したポイントに加えて、今後はさらに詳しくそれぞれの手続きや段階におけるポイントについて解説していきますので、次回以降の記事も楽しみにお待ちいただけますと幸いです。