韓国の原子力発電関連企業の株価が、スリラーのような展開を見せています。米国企業との不公正な契約締結疑惑が株価の急落を招き、個人投資家が大きな損失を被りましたが、そのわずか数日後には長期的な協力への期待から株価が急騰しました。

市場への打撃:ウェスチングハウスとの「屈辱的契約」問題

韓国の国営企業である韓国電力公社(KEPCO)と韓国水力原子力(KHNP)が、米国の巨大企業ウェスチングハウスと不公正な契約を締結したとの疑惑が浮上し、原子力関連株市場は大きな衝撃を受けました。

このニュースは連鎖反応を引き起こし、特に業界の主要企業の一つである斗山エナビリティ(Doosan Enerbility)が最大の打撃を受けました。同社の株価は4営業日連続で下落。特に19日には、株価が6万5100ウォンから5万9500ウォンへと8.6%も急落しました。翌日も下落は続き、株価は1ヶ月ぶりに5万7400ウォンまで落ち込みました。**ハンジョン技術(KEPCO E&C)**など、同セクターの他の企業の株価も同様に下落しました。

勝者と敗者:損失を被った個人投資家

株価が急落した期間の取引データを分析したところ、主に個人投資家が損失を被ったことが明らかになりました。平均して、個人投資家は斗山エナビリティの株式を5万6646ウォンで購入し、5万6504ウォンで売却しており、損失を確定させていました。

その一方で、外国人投資家や機関投資家はこの変動性を巧みに利用しました。彼らは下落した株式を(平均5万6087ウォンで)買い集め、より高い価格(平均5万6798ウォン)で売却することで利益を上げていました。パニック相場で個人投資家が損失を出し、大手プレーヤーが利益を得るというこの構図は、過去の市場不安定期にも見られた現象です。

急反転:割安株狙いの買いが殺到

しかし、21日になると市場の雰囲気は一変しました。原子力エネルギーの長期的なポテンシャルは依然として高いという専門家の見方が広がる中、投資家の買い意欲が回復しました。特に機関投資家を中心に、割安になった株式を狙った「バーゲンハンティング」が活発化したのです。

その結果、斗山エナビリティの株価は**7.14%**急騰し、6万1500ウォンまで回復しました。他の関連銘柄はさらに目覚ましい上昇を見せました。

  • 宝城パワーテック(Bosung Powertec): +21%

  • ハンジョン技術(KEPCO E&C): +15%

  • 大宇建設(Daewoo E&C): +13%

時間外取引の段階から強い買いが見られたことは、投資家の楽観的な見方が市場に戻ってきたことを示していました。

問題から戦略的パートナーシップへ:将来への期待

逆説的ですが、問題となった今回の契約は、原子力分野における米韓の長期的な戦略的提携の礎となる可能性があります。アナリストや政府関係者の間では、この合意がグローバル市場での共同事業への道を開くとの見方が強まっています。

この期待を後押しする要因はいくつかあります。

  1. 米国の需要: 米国政府は、AI(人工知能)やデータセンターの拡大に伴う電力需要の急増に対応するため、2050年までに約300基の新たな原子炉を建設する計画です。

  2. 技術と建設のシナジー: ウェスチングハウスは独自の基幹技術を保有しており、一方の韓国企業は世界最高水準の原発建設能力で知られています。これらの専門知識を組み合わせることで、強力な相乗効果が期待できます。

  3. 直接交渉: KHNPはすでに米国市場への進出を目指し、ウェスチングハウスと合弁会社(JV)の設立を協議していると報じられています。また、近く開催される米韓首脳会談でも、両国の原子力協力が主要議題の一つになると見られています。

韓国産業通商資源部の関係者は、「米国の建設能力だけでは、この野心的な計画を実現するには不十分だろう。これは、優れた建設能力を持つ韓国企業にとって、計り知れない機会が開かれていることを意味する」と述べています。このように、当初は国内問題として始まったこの出来事が、将来的には数十億ドル規模の契約につながるグローバルなパートナーシップへと発展する可能性を秘めているのです。