【拡大するAI需要とデータセンターの課題】
OpenAIは、自社のAI開発目標を実現するために必要な巨大なデータセンターの構築と資金調達が、想定以上に難しいことを痛感しています。生成AIの進化は、これまで計算能力の飛躍的な向上によってもたらされてきましたが、今やAIモデルの運用自体も大量のデータセンターを必要とする段階に突入しています。

【ソフトバンクとの提携における現実】
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今週、OpenAIがソフトバンクとの関係において、複数の課題や行き違いに直面していると報じました。今年1月、両社は直ちに1000億ドルを投資する計画を発表しましたが、実際には具体的な契約には至っていません。今年進展したのは、オハイオ州に小規模なデータセンターを新設する計画のみであり、当初の野心的な目標は現実的な規模に修正された形です。

【Oracleとの新たな連携と拡大戦略】
一方、OpenAIはオラクルとの協力をさらに強化しています。今週発表された新たな提携により、テキサス州アビリーンで進行中の800メガワット規模のプロジェクトに加え、追加で4.5ギガワットのデータセンター容量を構築する計画です。サム・アルトマンCEOは社員向けメモで、「これにより6か月前にホワイトハウスで発表した5000億ドル規模のコミットメントを上回る見通しだ」と述べ、今後もオラクルやソフトバンク、マイクロソフトなどと協力関係を拡大する意向を示しています。

【多様なパートナーとの連携と国際展開】
かつてはマイクロソフト1社に依存していたOpenAIですが、現在は様々な企業や各国政府と連携して、より多くの計算資源確保を目指しています。今年5月には、各国と提携する「OpenAI for Countries」プロジェクトを開始。アラブ首長国連邦(UAE)との最初の合意を皮切りに、アジア各国でも投資家や政府関係者と協議を重ねています。さらに、必要なコンピュートリソースを確保するため、競合のGoogleとも連携を進めています。

【今後の供給見通しと組織戦略】
アルトマンCEOは社員向けメモで、今後のリソース確保に自信を示し、8月末までにNvidia A100相当のプロセッサを200万基分、年末までには倍増させる計画を明らかにしました。一方で、多数のデータセンタープロジェクトが並行して進行しており、管理は容易ではありません。Stargateという名称で呼ばれる次世代型データセンター構想も、地域やパートナーによって内容が異なります。例えば中東では「Stargate UAE」として、オラクルやNvidia、Cisco、ソフトバンク、そしてMicrosoft出資のG42などが参加しています。

【年間3兆円規模のデータセンター契約】
先月、オラクルは年間300億ドル(約3兆円)規模のクラウドサービス契約を締結したことをSECに報告しました。これがOpenAIとの契約であることが今週明らかになり、サム・アルトマンCEOも内容を認めています。これはStargateプロジェクトの一環であり、4.5ギガワット規模のデータセンター建設に充てられる予定です。ちなみに、この契約にはソフトバンクは含まれていません。

【まとめ】
AI需要の爆発的な拡大に伴い、OpenAIは複数の企業や国と連携しながら、かつてない規模でデータセンターの建設と運用を進めています。しかし、資金調達やパートナーシップの調整など、現実の壁も顕在化しており、今後の展開が注目されます。