日立製作所(証券コード:6501)の株価が大きく続伸し、2024年4月12日に記録した上場来の最高値を更新した。6月24日午前9時46分時点では、前週末比で1580円(11.7%)高となる1万5055円を付け、市場の注目を集めている。

この株価上昇の背景には、6月26日の取引終了後に発表された2025年3月期の連結業績見通しがある。日立は、国際会計基準(IFRS)に基づく連結純利益が前期比1.7%増の6000億円に達する見込みだと明らかにした。同時に、自社株買いの実施および株式分割の発表が重なったことで、株主還元姿勢が強調され、投資家心理を大きく押し上げた。

売上減でも利益は確保 アステモの除外が影響

売上収益については、自動車部品子会社である日立Astemo(アステモ)が2024年3月期中に連結対象から外れた影響を受け、全体としては9兆円にとどまり、前年同期比で7.5%減となる見通し。しかしながら、この構造変化にもかかわらず、利益面では堅調な伸びが見込まれており、収益体質の強化が進んでいることがうかがえる。

特に、IT、鉄道・エネルギー、産業機器といった主要3部門ではいずれも増収増益が予測されており、これらの分野での事業拡大がグループ全体の成長を下支えしている。

成長ドライバーは半導体装置とDX関連事業

日立が力を入れている計測分析システム部門では、半導体製造装置を中心に大幅な成長が見込まれている。この分野では前年比で2ケタの増収増益が予想されており、今後の収益の柱としての期待が高い。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援事業でも、ソリューション型サービスの需要が堅調で、企業の業務効率化や社会インフラのデジタル化に貢献している。

これらの動きは、日立が単なる製造業の枠を超え、テクノロジー企業としての地位を強化していることを意味する。特にAIやIoT、クラウド基盤を活用したビジネスモデルの展開により、グローバル市場での競争力をさらに高めていく構えだ。

自社株買いと資本政策も高評価

今回発表された自社株買いは、発行済株式総数の2.27%にあたる2100万株、金額にして2000億円を上限とするもので、株主への還元強化の姿勢が明確に示された。市場ではこれを好感する声が多く、安定した財務基盤に加えて柔軟な資本政策が今後の成長戦略を支えると見られている。

一方で、2025年3月期の配当予想については現時点で「未定」とされており、業績の進捗や事業環境の変化を見極めたうえで判断される見通しだ。とはいえ、今回の自社株買いや成長分野への積極的な投資姿勢から、長期的には株主価値の向上が見込まれている。

今後の展望と市場の期待

日立製作所は、近年進めてきたポートフォリオの再編とグローバル事業の最適化により、構造改革の成果が徐々に現れてきている。特にエネルギー分野における脱炭素ソリューションや、社会インフラ分野でのスマート技術の導入など、持続可能な社会の実現に貢献する取り組みが評価されている。

投資家からは、「日立は今後も成長が見込まれる企業であり、安定性と成長性を兼ね備えている」との声が上がっている。今後の業績発表や中期経営計画に対する期待も高まっており、引き続き注目を集める展開となりそうだ。