米暗号資産(仮想通貨)取引所大手コインベース・グローバル(NASDAQ: COIN)の株価動向に、市場関係者が固唾を飲んでいる。直近の取引で株価は前日比16.46%高の164.32ドルまで急伸し、出来高も3200万株を超える活況を呈した。しかし、この短期的な反発の裏で、同社CEOブライアン・アームストロング氏による大規模な自社株売却が続いており、投資家の間に波紋を広げている。
止まらぬインサイダーの売り
アームストロングCEOの売却姿勢は徹底している。過去9ヶ月間のデータを見ると、同氏は合計で5億4570万ドル(約800億円相当)もの自社株を市場で処分した。特筆すべきは、その間に買い注文が「ゼロ」であるという事実だ。全88回に及ぶ取引はすべて「売り」で構成されている。
VanEck社のマシュー・シーゲル氏の分析によれば、2025年4月から2026年1月にかけて、アームストロング氏が手放した株式数は150万株を超える。中でも最大規模の売却が行われたのは2025年6月25日で、この日だけで33万6265株を平均355.37ドルで売却した。直近の動きも活発で、1月5日には4万株を254.92ドルで売却し、約1億160万ドルの現金を手にしている。
機関投資家の動向と資産への影響
こうした継続的な売り圧力と株価の下落基調は、アームストロング氏自身の資産額にも影を落としている。ブルームバーグの試算によると、2025年7月に177億ドルでピークに達した同氏の純資産は、その後100億ドル以上目減りした。現在の資産額は約75億ドルと見積もられているが、その大半は依然として彼が2012年に共同創業したコインベースの保有株(全株式の14%)に紐付いている。
また、コインベースから資金を引き揚げているのは創業者だけではない。「クジラ」と呼ばれる大口投資家も動いている。キャシー・ウッド氏率いるアーク・インベスト(Ark Invest)は2月5日、1740万ドル相当のコインベース株を売却した。同社はその資金を、競合するデジタル資産取引所「Bullish」への1780万ドルの投資に振り向けており、業界内の競争激化を物語る動きとなっている。
拮抗するアナリスト評価とテクニカル分析
ウォール街の見方は現在、真っ二つに割れている。ゴールドマン・サックスは1月5日、取引手数料以外の収益成長が市場サイクルの変動に対する緩衝材になると評価し、目標株価を303ドルに設定して「買い」推奨とした。
対照的にJPモルガンは慎重な姿勢を崩さない。取引量の減少、暗号資産価格の軟調さ、そしてステーブルコインの成長鈍化を理由に、火曜日には目標株価を27%引き下げた。実際、株価は先日、長らくサポートラインとして機能していた230〜240ドルの重要な価格帯を割り込み、一時6%の下落を記録するなど、テクニカル面でのダメージは深刻だ。
現在の株価(164.32ドル)は、直近の安値圏からは反発しているものの、依然として厳しい局面に置かれている。弱気相場を示唆するスーパートレンドは189.46ドル付近にあり、現在値の重石となっているほか、パラボリックSARも168.59ドルで下落圧力を示唆している。440ドル台から続く下降トレンドラインが上値を抑え続けており、160ドルを割り込む場面では150〜155ドルのゾーンが試される展開となっている。
次の主要なサポートラインは140〜145ドル、心理的節目となる130ドルが控えている。本格的な回復軌道に乗るためには、まずパラボリックSARが位置する168〜170ドルの水準を奪還し、その上で190ドルのスーパートレンド・レベルを目指す必要があるだろう。かつての支持線であった230〜240ドルを再び上抜けることができれば、崩れたチャート形状の修復が期待できるが、道のりは平坦ではなさそうだ。