キャピタル・ワンによるディスカバーの買収が、発表から15か月を経て正式に完了した。5月18日(日)に成立したこの取引は、総額350億ドルに達し、米国内で貸付残高ベースで最大のクレジットカード発行会社が誕生したことになる。
キャピタル・ワンの創業者兼CEOであるリチャード・D・フェアバンク氏は、「今回の合併は、革新性と使命感を共有する2社を結び付け、消費者や企業、加盟店に向けて画期的なサービスや体験を提供する体制を整えるものです」との声明を発表。ディスカバーの取締役会、経営陣、そして暫定CEOマイケル・シェパード氏に対して感謝の意を表した。
さらにフェアバンク氏は、「キャピタル・ワンとディスカバーの数千人におよぶ従業員の尽力により、私たちは“より良い銀行の形”を目指し、何百万人もの顧客のために変革を続けていけると確信しています」と語った。
買収は2024年2月に発表され、同年4月18日には連邦準備制度理事会(FRB)と通貨監督庁(OCC)から、2023年12月にはデラウェア州銀行監督局から、それぞれ承認を得ていた。
ただし、最終決定の数週間前には、カリフォルニア州選出のマキシン・ウォーターズ下院議員とマサチューセッツ州のエリザベス・ウォーレン上院議員の2名がFRBに書簡を送り、承認の再検討を求めていた。
その書簡では、「FRBがこの取引を無条件に承認することは、消費者や小規模事業者にとって不利益となる」と指摘。「国内最大のクレジットカード発行会社の顧客にアクセスするため、加盟店はキャピタル・ワンのネットワークが提示する条件を受け入れざるを得なくなる」との懸念が表明された。
一方で、買収発表当初から業界内では前向きな見方も広がっていた。PYMNTSは、給与の入金と出費のバランスに苦しむ層にとって、今回の統合が支援になる可能性を指摘している。
また、キャピタル・ワンにとっては、ディスカバーが保有または開発してきた技術基盤を活用することで、国際商取引や決済分野でのスケール拡大が期待されている。
特に注目されるのは、ディスカバーが独自の決済ネットワークを持っている点だ。これにより、キャピタル・ワンはVisaやMastercardに対抗する力を強化できる。フェアバンク氏も買収発表時に、「世界最大級の決済ネットワークと競合できる決済基盤の構築が可能になる」と強調していた。
なお、キャピタル・ワンは最近、別の注目を集める動きも見せている。顧客からの訴訟に対し、4億5,500万ドルの和解金で合意したことが報じられた。この訴訟では、同社が「360セービング口座」で高金利を謳っていた一方で、新規顧客向けの「360パフォーマンス・セービング口座」ではさらに高い金利を提供していたとして、既存顧客を誤認させたとする内容だった。
今回の買収完了により、キャピタル・ワンは米金融業界におけるプレゼンスを一段と強化し、競争の構図にも大きな影響を与えることが予想されている。