2025年4月、アステラス製薬(4503)は2024年3月期の決算報告を発表した。この1年間で4度にわたる業績予想の下方修正を経て、純利益は期初の見込みを9割以上も下回るという厳しい結果となった。

決算説明会で、岡村直樹CEOは「株主の皆様の期待に応えられなかったことを深く反省している」と述べ、異例の低姿勢を見せた。強気な発言で知られていた彼の変化は、同社の深刻な状況を物語っている。

続く下方修正、株価は25%下落

アステラスは2024年初め、売上高1兆5200億円、営業利益2880億円、純利益2270億円を見込んでいた。しかし四半期ごとの決算発表のたびに予想を引き下げ、最終的な営業利益は255億円、純利益は170億円にとどまった。

2023年には2000円台だった株価も、現在は1500円前後まで下落。1年間で約25%の下落となり、市場の信頼は大きく揺らいでいる。

UBS証券の春田かすみアナリストは「強気すぎる業績予想が続いたことで市場の信頼を失った。投資家は、より現実的な業績予想を求めている」と指摘する。

楽観的な予測が裏目に、社内外から不満の声

アステラスが強気の予想を掲げ続けた背景には、2027年に特許切れを迎える前立腺がん治療薬「イクスタンジ」への依存がある。同薬の売上は2024年3月期で7500億円と、アステラス全体の売上の47%を占めた。しかし、特許が切れれば後発品の台頭で売上は急減する見込みだ。

これに備え、アステラスは抗がん剤「パドセブ」や眼科用治療薬「アイザーヴェイ」に期待を寄せてきた。2025年3月期にはパドセブの売上を1512億円、アイザーヴェイを464億円に伸ばす計画を立てていたが、イクスタンジの売上減少を補うには不十分な状況だ。

また、2023年に米国で販売を開始した更年期障害治療薬「ベオーザ」も当初の期待を大きく下回った。ピーク時売上5000億円を見込んでいたが、2024年3月期の実績はわずか73億円にとどまり、予想を2500億円に下方修正せざるを得なかった。

腎性貧血薬「エベレンゾ」も競争激化の影響で、2023年と2024年に計630億円の減損損失を計上。市場からの厳しい視線が注がれている。

市場の信頼回復に向けた課題

アステラスが直面している課題は、特許切れによる売上減少をどのようにカバーするか、そして市場の信頼を取り戻すことだ。業績予想を現実的な水準に調整し、新薬の収益化を加速させなければ、さらなる株価下落は避けられない。

市場の投資家も慎重な姿勢を強めており、今後のアステラスの経営判断が注目される。特許切れを目前に控えた2025年、アステラスは正念場を迎えている