アメリカ連邦準備制度(FRB)が重視するインフレ指標が12月に再び上昇した。主な要因は、エネルギー価格と食品価格の上昇だ。しかし、根本的なインフレ傾向を示す指標では、価格上昇を抑制する取り組みが一定の成果を上げていることも示された。

米商務省が金曜日に発表したデータによると、個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比2.6%上昇し、11月の2.4%から加速した。

前月比では、12月の物価上昇率は0.3%と、11月の0.1%から大きく伸びた。この結果は、経済学者の予測通りであり、FactSetのコンセンサス予測も同じく0.3%の上昇と2.6%の年間上昇を見込んでいた。

一方で、食品やエネルギーといった価格変動が激しい要素を除いた「コアPCE物価指数」は、前月比0.2%の上昇となり、3か月連続で年率2.8%を維持した。この結果も市場予測と一致している。

インフレは落ち着きつつあるが…

インフレ率は、2022年夏のピーク時と比べると大幅に低下しており、この傾向は2024年にかけて継続している。その結果、米経済が景気後退に陥ることなく物価安定を実現する「ソフトランディング」が依然として可能な状況にあると見られる。ジョー・バイデン大統領の任期終盤においても、米経済は安定的に推移している。

消費者の支出が大幅に増加

PCE物価指数は、米商務省が毎月発表する「個人所得・支出レポート」の一部であり、米国民の収入、支出、貯蓄の動向を包括的に示している。12月には、消費者の支出が大幅に増加した。

個人消費は前月比0.7%増加し、経済学者の予測(0.5%増)を上回る結果となった。

11月下旬の感謝祭によりホリデーシーズンの買い物は12月に集中したことが、この増加の一因とみられる。また、EYパルテノンのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は、2024年10月に発生した2つの大型ハリケーンの影響で、車や家具などの損壊品の買い替え需要が発生したことも背景にあると指摘する。

さらに、消費者は今後の関税措置を見越して耐久消費財を前倒しで購入している可能性がある。パンテオン・マクロエコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、サミュエル・トゥームズ氏は、金曜日に発表した顧客向けのリポートで、「テレビやテクノロジー製品、自動車の購入が顕著に増加している」と指摘した。

トランプ氏の関税政策が消費行動に影響

ドナルド・トランプ前大統領は木曜日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課す計画を改めて強調した。

「消費者は価格に敏感であり、アメリカの2大貿易相手国からの輸入品に25%の関税が課されれば、多くの消費者にとって手の届かない価格になる可能性がある」と、FwdBondsのエコノミスト、クリス・ラプキー氏は金曜日のレポートで述べた。「生活費の危機が再燃するとは限らないが、関税が導入されれば、全てのアメリカ人にとって物価の負担は確実に増すだろう」と警鐘を鳴らしている。

また、同氏は「新政権の社会政策である移民流入の抑制や違法薬物対策に対し、国民がその代償を支払う覚悟があるのかは不透明だ」と指摘した。

今後の見通し

物価上昇の動向は依然として不透明だが、FRBは引き続き経済状況を注視しながら金融政策を調整していくと見られる。消費者の購買行動や関税政策の行方が、2024年以降の米国経済の動向を左右する重要な要素となるだろう